MAURON MUSY(モーロンミュジー)徹底解析

MAURON MUSY(モーロンミュジー

ご存知だろうか。

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モーロンミュジーから展開される上位モデル《MM03》

私がこの時計を認知したのはつい最近のことだ。私は普段「グノシー」で様々な情報収集をしているのだが、そこで面白い記事を見つけた。それは『パッキンの劣化による防水不全がなく、全く新しい設計で防水性を保つ腕時計』という内容の記事だった。

これに目をつけた私は早速、表参道にある取り扱い店に向かった。そこで実機を見させていただいたので、実際に手に取った印象をレビューしたい。おそらく、日本初になるのでは...

モーロンミュジーがどのようなブランドなのかは皆さんで調べて欲しい。今回は実機レビューのみとする。

大まかに分け、3つの構成でレビュー進めていく。

  1. ケース
  2. 文字盤
  3. ムーブメント

 

1.ケース

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ケースの展開図   36個のパーツからなる複雑なケース構造   インターネットより引用

この時計は、パッキンを使用せず全く新しい設計で防水性を保つ。通常の時計はOリングと言われるゴムパッキンやバスケットでケース部品間を密閉することで防水性が保たれる。それに変わる機構がnO-Ring®システムといい、特許を取得した新しい構造の防水ケースだ。nO-Ring®システムとはメカニカルシーリング技術、クランプブレース、サテライト圧縮スプリングという3つの原理を複合することにより30気圧防水を確保しているのだが、詳しいことは各自で調べて欲しい。私は1つ調べたところでギブアップした。この新しい防水機構に関しては全くの専門外なのでなんとも評価し難いが、パッキンを使用していないということは半永久的に防水性が保たれるということになるだろう。当然この時計の売りはこの防水機構になるのだが、時計としての完成度も大変高かったため、そういった側面からレビューしたい。

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ケース側面はヘアライン、面はサンドブラストの仕上げからなり、仕上げレベルは大変美しい

上写真はケース側面から見たものだ。ケース構造は展開図から分かるように、インナーケースの外周を4つのパーツで覆いビス留めで固定され、これらにベゼルと裏蓋が取り付けられる。仕上げは主にヘアライン仕上げからなるが、ベゼル側面はポリッシュ仕上げ、ケースの斜面はサンドブラスト仕上げとおおよそ3種類の仕上げが施される。ケースパーツは36個からなり、このケースが防水性を保つことからも検討がつくが、ケースの工作精度はそうとう追い込まれているのだろう。精密な工作技術は外装の仕上げからも見て取れる。外装は多面構造からなるが、角は鋭く立ち、異なる仕上げの取り合い部はメリハリがついていて美しい。それぞれのパーツのチリ合わせも完璧で高い防水性と堅牢性は見て取れる。これら外装パーツは比較的に加工難度が高いとされるグレード5のチタンからなるが、その仕上がりは有名ブランドに匹敵する、もしくはそれらを超越するレベルだろう。ケースのみで防水性を保つほど工作レベルは高いのだから、外装の仕上がりがいいことは言うまでもないだろう...

 

2.文字盤

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文字盤に関しても非常に細かい造形が見られる。文字盤中央は波紋状に模様が掘られ、外周はボンベ状に隆起している。インデックスは隆起した曲線に沿って取り付けられ、ミニッツカウンターは秒間毎に堀がある。文字盤に関してもそれぞれ異なった仕上げを多用することにより立体的で間延びしない印象を与える。6時位置にはアプライドパーツにより『SWISS CRAFTED』と記されており、この時計が100%スイスメイドであることが証明されている。

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インターネットより引用

インデックスと針に関しては、直線的で両者ともに同じような形状をしている。針はセンターがヘアラインとなり斜面はポリッシュがかけられている。インデックスはバスタブ構造で、中央がサンドブラスト、外周はポリッシュ仕上げとなっている。太いインデックスと針がセットされ視認性は抜群だ。また、文字盤の立体感を損なうことのないよう、針とインデックスに関しても異なる仕上げを使い分けているため、より立体的な造形を見せる。

 

3.ムーブメント

モーロンミュジーには大きく分けて2型の展開になり、レビュー品は自社ムーブを搭載し、廉価モデルは汎用ムーブを搭載している。汎用ムーブはお世辞にも仕上がりが良いとは言えない。また、文字盤の仕上げも異なり、細かな造形は削がれ、平面的な仕上げにアプライドインデックスが取り付けられている。それぞれ価格はレビュー品が120万、廉価モデルが65万と、価格差が倍になるため致し方ないだろう。

今回はレビュー品に搭載される自社ムーブメント《cal.MM01》についてレビューする。

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上位モデルは自社ムーブメン《cal.MM01》が搭載される

まず、ムーブメントを見て感じられるのが、スケルトナイズされた地板だ。独立時計師グローネフェルドが制作するムーブメントを思わせる。それぞれスケルトナイズされた地板の断面は面取りがなされ、メカメカしい印象と美しい美観性が両立されている。PRは55時間、振動数は8振動と平均的な性能となるが直径33mmからなるムーブメントは迫力がある。テンプの調速機構は緩急針だが、ヴァシュロンなどに使用されるトリオビス緩急針だ。エタクロン緩急針などに比べ、細かな調整をすることができる高級仕様だ。輪列は2番車も4番車もセンターに配置しないオフセンター輪列となり複雑な輪列構造が強いられ、結果的にムーブメントに厚みが出てしまっていると感じる。また、オフセンター輪列ということで、時刻調整時の針飛びも懸念されるが、今回はリューズ操作NGだったため、操作感を確かめることができなかったことが悔やまれる。しかし、オフセンター輪列に配置することで、結果としてスケルトナイズされた地板から稼働する輪列が確認できることはむしろメリットになるか。いずれにしても、ブランドとして初の自社開発ムーブメントは、他社では見られない特徴的な造形がこの時計の完成度をさらに高めることに貢献しているのだろう。

 

総評

この時計の特徴はなんといっても、新構造の防水機構だ。しかし、このインパクトのあるキャッチコピーに劣ることのないケースの仕上げや自社ムーブメントはこの時計の完成度底上げに呈しただろう。130万と高額な時計であるが、これら要因から考えれば、決して高額でもないと感じるほどだ。今後、異なるケース形状での派生モデルが展開されていくのか、今後の進展に期待したい。