セラタニウムについてのインプレ《IWC》

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iwc.comより出典

先日、銀座に立ち寄ったついでにIWCのブティックに訪問した。お目当ては、SNSでは密かな話題になっていたIWCの新開発素材であるセラタニウムが初採用されたパイロットウォッチ・ダブルクロノグラフトップガン・セラタニウムである。今回は実際に本機を見てのエントリである。

本機のミソはなんと言っても、新開発のケース素材であるセラタニウムであるが、まずは外観全体のレビューについて。本機はパイロットウォッチ群でもトップガンの括りであり、当然ながらケース色はブラックである。驚いたことに、本機を除く現行のトップガンシリーズは殆どがセラミックケースである。一昔前はブラックPVDコーティングであったと記憶していたため、この変更に関しては率直であるが驚いた。

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iwc.comより出典

ダイヤルもケース同様にブラックである。インデックスの夜光は他のトップガンシリーズがホワイトカラーであるのに対し、本機ではマットグレーが採用されることで統一感は高く感じられた。インデックスは12時、3時、6時、9時位置は夜光付きのアプライドになっており、その他箇所はペイントである。クロノグラフ針と同軸にスプリットセコンド針が配置され、針先の赤のペイントと10時位置にあるプッシャーの赤いリングが唯一のアクセントとなる。

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iwc.comより出典

本稿の主題であるセラタニウムであるが、こちらはIWCの新開発素材である。セラタニウムはチタン合金の一種であるが、セラミックの主成分であるジルコニウムを添加し焼成路により高温処理を施すことで表面硬化しセラミックを形成する。結果として、チタンの軽量性とセラミックの耐傷性と双方の利点を兼ね備えたマテリアルである。また、セラミックの難点である欠損がなく、表面に形成されたセラミックはコーティングでないため剥がれる恐れもない。では、ここからが実機インプレである。本機を手に取ったファーストインプレは、「それほど軽くはない」。試しに純セラミックケースである他のクロノグラフトップガンと比較したが、やはり軽くはない。寧ろ、純セラミックの方が軽く感じた程である。スプリットセコンド搭載機であることを考慮しても、素材の軽量性を感じることはできなかった。アピアランスに関しては、セラタニウムとセラミックでは明らかな違いがあった。セラタニウムは仄かに金属的な輝きを持ち、例えるならばブラックPVDのような色合いである。陶磁器というよりは、明らかにそれが金属質であることを連想させる。耐傷性に関しては不明であるが、チタニウムが配合されていることや、表面の金属質な素材感を見るに欠けや割れによる損傷はないのだろう。それを象徴させるように、本機ではリューズやプッシャー、裏蓋なども全て同素材であるセラタニウムで形成されている(セラミックモデルでは別体パーツはチタン製)。ケース構成はパイロットシリーズ同様にミドルケースとベゼルが一体になったケース本体と裏蓋の2ピース構造。私個人としては、このマスプロダクト的な2ピース独特の削り出しケースは好きである。セラミックモデル同様にケース表面の仕上げはなく、艶消しのマットである。ケースの稜線はSSやチタン程のエッジは立っておらず、あくまでセラミックに近しい面取り処理が施されている。

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iwc.comより出典

セラタニウムのインプレは以上であるが、最後にムーブメントについても少し触れておこう。本機はスプリットセコンド(ラトラパンテ)搭載機であるが、ベースムーブメントはValjoux7750である。そのため、リューズの巻き上げは7750独特のジリジリ音である。クロノグラフプッシャーもやはり7750感を色濃く残すが、スプリットセコンドプッシャーやリセットプッシャーとの押し心地もうまく調整されているため、不快感はない。ケース厚に関しても、他のクロノグラフと遜色ないため、汎用ムーブを上手くモデファイしていると感じた。

本機の価格は¥1,716,000である。同様ムーブを搭載したポルトギーゼ・ラトラパンテ(SS)の価格が約¥1,400,000であることを見るに、この差額が素材違いによるコストである。特段高すぎるという印象も受けないため、今後のセラタニウムプロダクトの展開に注目したい。