新生マリーン誕生

ブレゲについて語りたい

先日、銀座の時計ブティックを徘徊していた。ブランドによっては年初に発表された新作腕時計のサンプルや販売品が納品され、実物を見ることができた。タイミングに恵まれたのだろう。

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2018年にブレゲはフルモデルチェンジ、2019年にはメタルブレスが追加された            インターネットより引用

おそらく各ブランドで様々な新作コレクションがある中で、私が『これは‼︎』と感じたのはブレゲ マリーン(メタルブレス)のモデルだ。マリーンは2018年にフルモデルチェンジが発表されて新生マリーンとして生まれ変わった。そして、翌年2019年にはマリーンにメタルブレスが追加されたモデルが発表された。(それ以前はレザー・ラバーモデルのみの展開)このメタルブレスモデルが非常に素晴らしい。

このモデルの素晴らしさを言葉で淡々と説明することは難しいので、今回はパッションで力説するしかない。ただ、この記事により少しでも新生マリーンに対して興味をもつ方がいれば幸いだ。

新生マリーンの素晴らしさを一言で表すと、《ミニマルとラグジュアリースポーツの融合》だろう。マリーンⅡ(先代モデル)では、クラシカルな表情(造形)に対して、実用的な防水性とそれに耐えうるムーブメントを搭載することで普段使用できるブレゲらしいコレクションとして好評のモデルであった。対して、新生マリーンではクラシカルな造形が削がれ、よりスポーティーに、よりミニマルな印象を与える。正直な話、2018年当時に新生マリーンが発表された時は、『なんとなく物足りない』そんなイメージを持った方は少なくないだろう。それだけマリーンⅡの随所にまで至る細かな造形が評価されていたのだろう。しかし、今作で新生マリーンにメタルブレスが与えられたことで、全く新しい表情を見せた。それらが与える印象は時計としての一体感につながり、ファーストインプレッションから今回の完成度は感じられるだろう。

このモデルの素晴らしさを共有したいのだが、随所にわたる細かな造形までは説明できないので、重ね重ねになるが今回はパッション頼りになることが多いだろう。

 

時計としての一体感

この時計の造形は今まであるようで無かった形状だ。既存のラグジュアリースポーツウォッチと言われるモデル(ノーチ、RO、OS等)はケースとブレスレットは一体だったものの、ケースはオーバル形状になっており、ベルトもケース形状に沿って接続されている。しかし、新生マリーンはケースがラウンド型なのに対し、ベルトは直線的な形状である。ケースが一体型になりラグが取り除かれたことでラウンド型のケースに直接ベルトが接続されているような印象を受ける。これほどまでにミニマルな形状は他に類がないだろう。

既存の意匠と新たな挑戦

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インターネットより引用

ケース側面はマリーンⅡと同じくコインエッジ装飾だが、ケースとベルトを接続する大型なビスがとても印象的だろう。ベルトはシンプルな3連ベルトだが、コマ間がカットされポリッシュが施されることで、メリハリのある印象を与える。形状は非常にシンプルなのだが、細部に至る仕上がりが抜かりない。また、こちらはチタンケースとなり、非常に軽く普段使いには最適だ。チタンケースでここまで作りこまれている時計は稀だろう。ブレゲマリーンとしても新しい試みだ。

既存モデル(マリーンⅡ)の文字盤はギョーシェが施されたクラシカルな造形であったが、新生マリーンはグレーのサンバースト仕上げが施される。12時位置の《breguet》のロゴを中心にサンバーストが仕上げられ、文字盤の色合いはケース素材と非常に色馴染む。ちなみにタイプⅫ以外のブレゲコレクションは文字盤が18kゴールドからなる。加工性がいいゴールドはギョーシェのと相性も良いのだろうが、サンバーストに関しても同様に気品ある印象を与える。風防はボックス形状となっており、ベゼルは極限まで薄く控えられることで、より風防の立体的な造形が強調された。伴って文字盤の立体感もより強調され、18kゴールドのアプライドインデックスは視認性をより高める。針は外周のミニッツトラックまで届く程長く、夜光付きのポインターが配置される。文字盤はインデックスや針と同色の色合いだが、視認性は驚くほど良い。

総評

今回、新生マリーンのブレスレットモデルが追加され、私のファーストインプレッションは絵に描いたようなシンプルな時計だと感じた。反面、これほどまでにシンプルな時計が他にないことにも気づいた。しかし、細部に着目すると既存のマリーンから受け継がれる意匠を感じつつ、まったく新しい造形に新鮮な印象を受けた。新生マリーンは現代的なトレンドデザインを体現化し、正統進化を果たした。