《続》グランドセイコー60th記念モデルについて

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GS HPより出典

前編→グランドセイコー60th記念モデルについて - About Watch Diary

前編では、ほぼ全てが9SA5関連であった為、当エントリでは外装諸々について。

本作はグランドセイコー60th記念ヘリテージモデルであり、同社にとって特別なモデル位置づけである。そのため、開発陣がインラインとの差別化を図ろうと意識したことは確かだろう。外装のアピアランスはそのバイアスが顕著に現れており、結果としてこのようなディテールが与えられたのだろう。デザインの良し悪しは、あくまで主観による判断であるため、非難覚悟で率直に記す。ちなみに、サンプルを銀座ブティックにて確認済みであり、凡そのディティールは既知である。

まずはダイヤル。サンレイが施されたシルバーダイヤルは特に特別な印象を抱くことなく既視感だけが残る。6時位置のレターにはSDマークが印字されており、ヘリテージコレクションであることを観取する。ちなみにSDダイヤルは植字マテリアルが金無垢であることを示す。インデックスはかなり肥大した印象を受ける。インデックスのセンターにはダイヤモンドカットによる溝が施されており、光源に晒すとこの溝がキラリと輝く。そのため、相変わらずインデックスの輝きばかりが印象に残り、繊細な仕上げまでには目に止まりづらい。インデックスの肥大化に関しては、パッケージングによる方向性の表れと割り切れるかであるが、そろそろダイヤモンドカットごてごてのインデックスは再考する次期だと感じてしまう。針はGSらしい5面カットを施す立体的な造形である。スリーハンドをそれぞれ適正な位置まで届かせるのが従来のアイデンティティであったが、今作に至ってはアワーハンドにインデックスと同様なディテールを与えたため、それが伝承されていない。インデックスのバランスに合わせるならばこのようなアワーハンドになるのは最もであるが、スリーハンドのバランスの違和感だけが、ただただ心残りである。

外装はいたってGSらしい造形である。納得できなかったポイントはベゼルである。ディティールは平面的であり、表面はヘアライン仕上げ、側面の傾斜部にポリッシュ仕上げが施される。例えるならばロイヤルオークのベゼル。よって、視覚的に高低差を強く感じ、薄型にリファインされたムーブとの相性とは乖離した印象を受ける。さらに、合わされる風防はボックス形状であるため、ベゼルより一段上がった風防が、より高低差が激しく感じさせる。結果的にダイヤルのクリアランスが大きくなり、見返しを低く抑える高級時計の定石からは逸脱している。いい加減ここは改善するべき。

さて、本作は100本限定で450万。値段についての議論は無意味のように感じるが、世間の評価がどれ程であるかは気になるところ。脱進機で言えば、APのかのAP脱進機は数千マン、かたやオメガのコーアクシャルは100万アンダーである。ここでセイコーの新型脱進機がどの立ち位置になるかは興味深いが、これに関しては時間が解決してくれるだろう。しかし、今作の発表で業界内では少なくとも国産企業としての頭角を現したし、今後の展開がとても面白くなりそうである。