語れる時計とパッケージングについて

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IKEPOD officialより出典

最近気になる時計がある。

そう、アイクポッドである。私は当時のアイクポッドが過去にどれだけのプロダクトを世に出し、時計界にどれ程の影響を及ぼしたのか知らない。もちろん、アイクポッドというブランドは知っていたし、どのような時計なのかは、ある程度認識していた。しかし、ここにきて何故かこの時計に惹かれるのである。もちろん、時計としての完成度はプライス以上の高い水準であり、プロダクト的に完成されている訳だが、それ以上にうちに秘めた魅力が購買意欲を掻き立てるのである。

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左)ジュールオーデマ  中央)オーバーシーズ 右)グランドセイコー  

私のこれまでの時計遍歴というのは、殆どがプロダクトクオリティ重視であり、それというのはメーカーの伝統や技術力はあまり考慮していない。一プロダクトとして、その製品の品質や魅力に惹かれるか、それだけである。対して、アイクポッドは私にとってこれらの対極に位置する。アイクポッドの魅力はクオリティ的要素というよりは、むしろそれ以外の要素が大きいということだ。では、『それ以外の要素』とは、何なのだろう。

いい時計と言われる最大の要素とは何か。このQに対して多くの時計ジャーナリストは『優れたパッケージング』と答える。パッケージングとはなかなか聴きなれないワードであり、実際に時計を手にして、その時計のパッケージングを瞬時に読み解くことは難しい。パッケージングを読み解くには、そのメーカーの歴史や伝統、時計のプロダクトコンセプトなどの見識が必要になる。これは決して簡単な話ではない。そして、時計のパッケージングが明快になった時、様々な知見からその時計に与えられたデザインの意図が読み取れる。優れたパッケージングを持つ時計は、細部に至る細かなディテールがすべて一貫されたコンセプトに基づき、それらが完璧なバランスで調和され仕上げられる。

ここでアイクポッドの話に立ち返る。アイクポッドは私が時計に抱くこれまでの見識とは異なるカテゴリーであるが、コンセプトが一貫しておりパッケージングが明確である。絶妙なのはプライス的な制約の中で、オリジナルを忠実に再現している点である。そして、U10万でこれ程までに語り甲斐のある時計が他にあるだろうか。そして、気づいたのである。時計収集とは自己満足の世界でしかないのだが、その中でも"語れる時計"こそが最もサティスファクションを高める中枢だろう。さて、意を決してアイクポッドに清水ダイブか...。もう少し動向を見たい所ではあるが、この物欲を抑え切れるのは時間の問題か...。