ブライトリング迷走

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Men's EXより引用

今回の記事は、ブライトリングCEOにジョージ・カーンが就任したことによるブランドの変化と、近年のコレクションに想うことを書き連ねたい。

ブライトリングのCEOにジョージ・カーンが電撃移籍したことは大々的に取り上げられたし、皆さんの記憶にも新しいだろう。彼の経歴は、低迷していたIWCの経営を持ち直し、大きく躍進させることに成功したキャリアを持つ。そして、2017年にブライトリングのCEOへ就任し、彼がブライトリングで打ち出した施策は《リエディション》。ブライトリングの歴史的な過去のアーカイブを現代のコレクションに落とし込むことを意味しているようで、それらはすでに現在のコレクションにも反映されているだろう。

ジョージカーンがCEOに就任し、今日に至るまで新しいコレクションはいくつか展開されている。最も印象的なコレクションは彼が就任後に発表したナビタイマー8であろう。さらには、プレミエやスーパーオーシャンヘリテージ、復刻シリーズなどか。しかし、この施策に対してはかなりの苦戦を強いられているらしい。

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2018年に発表されたナビタイマー8はレトロでエレガントな仕上がり。           BREITLING instagramより

現にナビタイマー8というモデルは発表から1年で生産打ち切り。不調続きであったためか『ナビタイマー』という称号は剥奪され、新たにアビエーターというモデル名に変わり、今もなお製造は継続されているが、先行きは明るくないだろう。新たなナビタイマーとしてブランドの代表的な名を冠し、ターニング要素を持つモデルが、メーカーの営利的な目的でモデル名を変更したのであれば、消費者の我々としても容認できないだろう。ナビタイマー8を実際に購入された方は、この事態に対してどのような気持ちを抱くだろう。少なくとも楽観的な印象を抱くことはないだろう。そして、アビエーターに更新されたことによりデザイン面でもアレンジが加えられたが、これがなんとも言えない仕上がりに、、、

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2019年にナビタイマー8からアビエーター8に変更された。

BREITLING instagramより

外見から見て取れる変化点はベゼルにアラビア数字が配された点だ。ナビタイマー8ではシンプルでエレガントな印象であったベゼルは、アビエーターの変更とともにアラビアが配され、元々の設計コンセプトから乖離しているように思える。そして、この細幅のベゼルにアラビアを配するデザイナーの意図を問いたい。美しいポリッシュベゼルに傷をつけたようにしか思えない。

 

そして、プレミエもこのままでは危うい。

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2019年発表のプレミエシリーズ、画像モデルはフラッグシップモデルのB01搭載モデル       BREITLING instagramより

1940年代、伝説的なクロノマットと同時期に製造されていたモデルがプレミエであった。当時ではプロフェッショナル計器であるクロノマットとは対極に位置するエレガンスラインとしてラインナップされていたコレクションだ。

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1940年代当時のオリジナルプレミエ

SJXより

現在では、ブライトリングに複数あったモデルを整理し《陸・海・空・プロフェッショナル》の4つの領域でカテゴライズされている。プレミエは陸のカテゴリーとして、現代的なデザインで復刻を果たした。しかし、このモデルはパッケージングが弱すぎる。プレミエがブライトリングの歴史的モデルであることを、どれだけの消費者が認知しているだろう。

 

ジョージ・カーンはリエディションを施策し、ブライトリングの過去のアーカイブを復刻モデルとして展開している。しかし、過去のアーカイブを復刻するということは、ブランドとしても軽率に行うことはできない。復刻を掲げたモデルが酷評になり廃盤となった時、そのモデルは過去の汚点として二度と我々の目に届けられることはない。今のブライトリングは、まさに過去のアーカイブを使い捨てのプロダクトとして利用しているように感じてしまう。